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日本プロゴルフ選手権 2009

篠崎紀夫は、教え子に負けじと…

18番は、8メートルのバーディパットを1メートル半オーバー。最後のパーパットはしびれた。後ろの組で回る池田勇太が、同スコアで並んでいたからだ。

篠崎が20数年前に研修生として入社して、今も席を置く所属先の千葉県の練習場「北谷津ゴルフガーデン」が推し進めてきたジュニア育成の一期生が池田だった。

幼いころからその成長を知っている“教え子”のスコアは、スタートから意識していた。

自分の組にはなかったが、今一番の成長株の組には、ボランティアの方が歩いて運ぶ、移動式スコアボードがついていた。
「勇太のスコアを何度も何度も振り返り、目安にした。とにかく、あいつについて行こうと」。
その一心で、いつの間にか首位タイで並んで迎えた最終ホール。
自分がボギーを打てば、教え子がその時点で単独首位に立つ。
「それはさせない!」と、執念でねじ込んだ。

そんな篠崎の思惑を知った池田は、「何言ってんだよ、まだ初日じゃん」と、呆れたが、このところ立て続けに優勝争いを繰り広げている教え子が目下、「篠プロ」の一番の目標なのだ。

「あいつは大活躍だけど、僕はまだ今年一度もトップ10すら入ってないし」。
やはり北海道(札幌GC輪厚C)で行われた2007年のANAオープンで、涙のツアー初優勝を挙げたが、そのときに得たシード権も、今年で切れる。

昨年は、試合中に足の腱を痛めるアクシデントで特に前半戦で苦戦しているだけに、「今年は早めに」という思いもある。

道内で1勝していることからも明らかなように、寒冷地特有の洋芝だと、いつも以上に実力が発揮出来るという。

「僕は力がない分、ターフを薄く取るタイプのスイングだから」。
クラブヘッドに絡みつくようなクセのある芝も気にならず、ピタピタとチャンスにつけた。

先週のUBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズでツアー初優勝をあげた五十嵐雄二にも、大いに刺激を受けた。
プロ17年目の初Vに2年前の、自身16年目の優勝シーンが重なった。
「あのときを、思い出しました」。

次の2勝目の欲が出てきた。
若い力が台頭するなか今週も、一気に5年シードが得られるプロ日本一決定戦で、2週続きでベテランの味を見せたい。

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