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〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック 2009

石川遼は「聖地でも、自分の持ち味を出したい」

縦にずらりと並べたボールをリズムよく打つ。スタート前に、ストロークの再チェック
元々練習の虫が、ますます練習場に向かうようになったのは、4月のマスターズから帰国してから。父・勝美さんは、「あんな子供には、ほんとうに大きな体験だった。意識が変わり、自分でいろいろ考えて練習するようにもなった」と、目を細める。

2日目、オーガスタの16番でバンカーにつかまりダブルボギーを打って、バンカーショットの集中練習を励行したのも、その直後だ。

この日、ワンオン狙いの7番で、グリーン手前の深いバンカーから距離のないアプローチをピンそばにぴたりとつけて見せたのも、その成果に違いない。

理想のショットは「何百回、何千回と同じ弾道、高さのショットが打てること」。
そのために、いっそう打ち込みの量が増え、何時間でも練習場に居座った。

「マスターズに行って、他の選手の姿勢を学んで、これまでの自分は本当ならもっと、気持ちを込めて練習出来たんじゃないか、と思う日が何十日もあったことに気がついた。
でもそういう日は1日もあってはならないと思う。そういう日を極力減らしたいと思った」と、石川は言う。

この日最終日のスタート前も、やはりグリーン上に数十個のボールを一列に並べ、連続してパットする練習を何回か繰り返した。
振り子の要領で、間髪入れずに打っていく方法で、正しいストロークを体にしみこませる。
これも、本人が編み出した方法だ。

体脂肪は今や10%を切り、体重はピーク時の73キロから3キロ減。
かわりに筋量は増して、ひと回りも大きくなった肉体は「気持ちを出来るだけ全面に出していこう」という気持から、この日最終日に選んだ真っ赤な上下の勝負服の上からでも伺えた。

プロ転向と同時に仲田健トレーナーの指導のもとスタートしたトレーニングはこの春から、筋力をさらに爆発力や瞬発力につなげていくメニューが加えられた。
この組み合わせにより、体を鍛え始めたことで以前よりも増したヘッドスピードにも対応出来るようになり、より飛んで曲がらない理想のショットに近づいた。

最大高低差43メートルのコースで、どんな傾斜地からも姿勢を崩さずぴたりと距離感が合わせられるのは、不安定な台の上で目を閉じて片足スクワットを繰り返すなど、常に軸のぶれないバランス感覚を養っているからこそ。

嫌でも左右に白杭が目につくコースで本人も、「4つ、5つのOB」を覚悟しながら、それでも頑固なまでにドライバーで攻めていけるのも、そんな日々の積み重ねがあるからだ。

いよいよ12番で2発のOBも「今週の4日間で考えればこの2つだけだし、5連続ボギーを打つよりは、取り返しもきく」と前向きに、その直後も恐れることなく「どう打っても大丈夫」と相変わらず強気で振り抜いて行く自信と確信はその1打の影に、何千というボールを打つことで培われたものだ。

「4日間、なんでこんなにドライバーがまっすぐ飛んだのか。まったくのまぐれですね」と口では謙遜しながら、「やっぱり僕はこれで行く」という芯の強さを滲ませる。

3週後に初めて挑むリンクスコースでも、「どんなに小さくても、自分の持ち味を出したい」と石川。
「僕のゴルフが通用するとはまだ思えないけれど。いつか、片山さんや、矢野さん。先輩たちのような活躍が出来るようになるための第一歩。当たって砕けろという気持ちで行こうと思う」と勇む17歳は、やっぱりゴルフ発祥の地でも、どんな過酷な条件にもこの日のように、果敢にドライバーを抜くのだろう。
  • 構えたらもう迷わない。一気に振り切るティショット。点在する白杭を怖がって刻む選手が多い中、今回も全ホール、ドライバーで勝ち取った栄冠だ
  • 7番で前組が終わるのを待ってワンオン狙い。豪快ショットで魅せたあと、ピンまで距離の近いバンカーショットをぴたり寄せる。胸をすくプレーはギャラリーをますます魅了
  • 先頭に立ち、急傾斜も駆け足で駆け下り駆け上る!! 常にゲームを引っ張り続けた
  • 全英オープンと同型の優勝杯クラレットジャグははるばるイギリスから届けられた。大切そうに抱きしめて…

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