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日本オープンゴルフ選手権 2009

日置豊一(ひおき とよかず)がホールインワンを達成

難コースに刻む選手も多い中で、日置はこの日、積極的にドライバーを握った。「僕なんかは飛ばないから。たとえばパー5で刻んでも届かないし、かといってドライバーで打っても届かない。なら、いっそ思い切って打って、3打目勝負で行けばいい」。

そう心に決めても、やはり、頭を使うコースには変わりなく、最終ホールに来るころには身も心もへとへとに…。

「早く終わりたいなあ」。
9番のティグラウンドに上がってそう思った。
193ヤードのパー3で、ささやかな望みがかなった。
番手は、この日は特に感触が良かったという5番アイアン。ティショットは手前5メートルから転がって、そのままカップインした。

試合では自身初というホールインワンは、74回と長い大会の歴史の中でも19人目という快挙達成にも、「これで1ホール、打たなくて良くなって。楽をさせてもらえた」とは、42歳らしいコメントか。

もっとも、最終ホールでの快挙達成という珍しいシチュエーションには戸惑いもあり、ギャラリーの歓声に手を振って応えたものの、「ほんとに入っているのかな。入ってなかったら、あんなに騒いだのに恥ずかしい」と、グリーンに上がってそっとカップをのぞき込み、ひそかに安堵のため息をつく。
しかも、このイーグルで一気にスコアを縮め、3アンダースタートには「上出来ですね」と、胸も踊る。

プロ入り15年目にしてシード権はおろか、今年は出場権すらままならず、二部ツアーのチャレンジトーナメントで2試合を戦っただけ。

しかし財団法人 日本ゴルフ協会主催の今大会は、日本ゴルフツアー機構が主管するトーナメントとは異なる出場カテゴリーがあることで、日置にも出番が回ってきた。

今大会3度目の出場権は、今年の地区競技の九州オープンの上位10人の資格で得た。同オープンの開催コースは武蔵カントリークラブよりももっとセッティングがシビアで、3日間競技で「6回しかフェアウェーにいかなかった」と、苦笑いで振り返る。

「グリーン回りも相当難しく、あのときは切り替えが大事だ、と。ストレスをためないようにした」という。
その経験が、さっそくこの大舞台でも生きている。
この日も、たとえグリーンを外しても、がっかりせずに、むしろ「多分寄らんな」と、諦めの気持ちでプレーした。
「…いや、もちろん寄せたい気持ちは一杯あるんですよ。でもね、そればっかり全面に出てしまうと自分が疲れるばっかりだから。明日も、常にボギーでいいやくらいの気持ちでね」。2日目以降も欲張らないことで、この日のホールインワン以上のツキを呼び込む作戦だ。