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三井住友VISA太平洋マスターズ 2007

今年開場30周年の記念大会に大奮闘御殿場コースのグリーンキーパー 久保田一彦さん(後編)

新・キーパー久保田さんの指揮のもと生き生きと働く御殿場のコース管理のみなさんにも支えられ・・・
今年の御殿場のグリーンの速さは13.5フィート。通常の一般営業が8フィート前後。久保田さんたちコース管理のみなさんの努力の甲斐あって、今年もみごとな超・高速グリーンに仕上がった。

選手たちから漏れ聞こえてくる賞賛の言葉は確かに、嬉しいには違いないが久保田さんは内心、居心地が悪いそうだ。
本人にとっては、納得できていない部分がたくさんあるからだ。

「僕らは単に速いグリーンを目指しているわけじゃないんです」と久保田さんはいう。
「一見、平らに見えても実はグリーンには目に見えない不陸があって、徐々に刈高(かりだか=芝を刈るときの長さ)を下げていくうちに、それが顔を出す。それを均一に揃えるためにローラーをかけ、砂を入れ、丹念にならしていった、その結果なんです。確かに今年も13フィート以上が出たけれど、だから完璧というわけではけしてないんです」。

前キーパーの日比野忠行さんから業務を引き継いで1年半。
昨年退職したとはいっても、自宅はコースから車で10分ほど。芝の状態を気にかけて、しょっちゅう足を運んで芝の成長状態をチェックしてくれたという日比野氏が、トーナメントコースを手がけた回数は40回以上。
「それにひきかえ、僕はこのVISAひとつだけ」。
経験の差をうめようと、久保田さんも必死だった。日比野氏に褒められたくて、焦っていた時期もある。
「最初は100点・・・いや、120点のコースを作ろうと躍起になっていたけれど。最近になってようやく分かったんです。この仕事に満点は、一生ないんだって。ひとつやりとげたらまたひとつ別の問題が持ち上がって・・・。その繰り返しなんだってね」。

久保田さんは、ある日の日比野氏との会話を懐かしく思い出す。
日比野さんは言った。
「おい一彦、お前はもしかして俺に褒められたいと思っているのか?」。
すぐに答えられずに詰まっていると「褒められた時点で、お前の成長は止まるぞ。それでもいいのか?」とたたみかけられ納得する一方で「いや、でもたまには褒められたいんです・・・と、あのとき心の中で思わずつぶやいたもんですよ」。

大会初日を迎えたクラブハウスで、照れくさそうにそう話した久保田氏の表情はしかし落ち着き払っていて、ときおりトランシーバーで入ってくる緊急を要するスタッフからの報告にも、顔色ひとつ変わらないように見える。

「よく“いつも冷静なんですね”とか言われますが、実は内心ではもの凄くビビっていたりするんですよ」と笑うが、どんなピンチにも動揺しない術は、ここ数年で培われたものかもしれない。

「イライラしたり、逆に張り切りすぎてるキーパーって、実はスタッフにはうっとおしくないですか? そんなんじゃあ、スタッフも窮屈になって個々の力を発揮できない」。
だからいつもできるだけ、幸せな気分でいるように心がけている、と久保田さんはいう。
「幸せなキーパーがいるコースは、きっとスタッフも幸せなんです。いつも幸せな気持ちで過ごしている人は、働く意欲も沸いてくる。細かいところまで、気持ちが行き届くようになる。・・・そういうもんじゃありませんか?」。

そして、そんなスタッフの気持ちが伝わって、きっと選手や、試合を見てくださったお客さんにも幸せな気持ちで帰っていただける・・・。
「僕がこの仕事をしていて一番嬉しいのは、『選手に“今年も良いグリーン仕上がったね”と声をかけてもらった』と言って、スタッフが喜んでいる姿を見ることなんです」と、久保田さんは言った。

そして、コースと格闘しているトッププレーヤーたちの真剣なその表情。
「それこそ、僕らの仕事への評価ではないのかなあと思うと、…一生懸命に戦っている選手のみなさんには申し訳ないですけど(笑)、やっぱりそれが一番嬉しいですよね」。

そんな久保田さんらが手塩にかけた御殿場コースを制して今年、頂点に立つのは誰か。
35年の記念大会は、いよいよクライマックスを迎える。

御殿場コースのグリーンキーパー 久保田一彦さん・前編
  • 大会はいよいよ最終日を迎える・・・!!