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サン・クロレラ クラシック 2005

昨年、大打撃を受けた小樽カントリー倶楽部大会を目前に、みごと復活!

コースチェックの合間に、打ち合わせをする大江さん。無事、本番を迎えて晴れやかな笑顔もこぼれる
昨年9月8日、北海道を襲った台風15号はここ小樽カントリー倶楽部にも甚大な被害をもたらした。数十年かけて、育まれてきたコースの樹々は、グリーキーパー兼副支配人の大江康彦さんの目の前で次々と倒れていった。数えられるだけでも3000本の樹が、無残に横たわった。
「あっという間でした。メリメリ、と激しい音を立ててあっけなく倒れた。なすすべも、ありませんでした」。

台風が去った翌日から、大江さんたちコース管理の方々の戦いは始まった。
倒木をどうにか全ホールのフェアウェーから撤去するのに、2週間以上を要した。その間、木が倒れ込んでいた箇所の芝には太陽が当たらず、刈れ始めていた。
そこにまた新たに種を撒いて、修復しなければならず、ほぼ元通りの状態にするのに約10ヶ月かかった。

ようやく、めどがついたのは今大会開催の1ヶ月前だ。

「コースのスタッフといつも話すのは、『いつも走っていよう』ということ。やるだけのことはやって、結果はあとからついてくる。そう信じて頑張ってきたのですが、やっぱり、それが形になって出てくるまでは、不安でたまらなかったですね。どうにかこれで大会ができる。そういう状態になって、みんなで胸をなでおろしました」(大江さん)。

もっとも、苦闘はそれで終わりではなかった。トーナメントを開催するのはコースをただ元に戻すだけでなく、トッププレーヤーたちを迎え入れるために、質の高いセッティングを施さなければならない。
今年の道内の雪解けは遅く、ラフの成長は思うようにいかず、ハラハラさせられたものだ。
修復費も膨大に膨れ上がった。外注費だけでも、5000万円を優に超えた。

しかし、「もともと、超・前向き思考」の大江さん。台風で失ったものも多いが、「反対にプラス材料となったものもある」と、考えている。

ホール間を遮る樹が無くなったことで、ティグラウンドから見える景色がガラリと変わった。フェアウェーのマウンドがくっきりと見えて、ホールによっては「前より、美しい」と思える箇所が増えた。

また選手たちの飛距離にあわせて、これまでは樹が邪魔をしてできなかった270ヤード地点に新たにバンカーが作れたり、コースセッテイングの可能性も広がったのだ。

「これから、まだまだやるべきことはありますが、ひとまず今年、無事大会を迎えられたことはひとつの節目です。幸い、選手のみなさんからも『今年も素晴らしいセッティング』という言葉もいただいています。それこそが、縁の下の僕達にとって何よりのねぎらいなんですよ」。

そういって、大江さんは愛しそうにコースをグルリと見渡した。

大会は残り2日。大江さんたちコース管理のみなさんが手塩にかけて修復し、新たに作り上げたこのコースで栄冠を掴むのはどの選手だろう。