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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2005

今野康晴「正しく“いまの”と呼ばれるまでは・・・」

ホールアウトするなり、チャンピオンはグリーンサイドに駆けつけた妻・崇乃子さんに言った。
「・・・4%にしてよ!」。
しかし、しっかり者の崇乃子さんは、優勝の感動にほだされることはなかった。キッパリと、首を横に振って言う。
「ダメ!! 3%以上は上げないよ!」。

今野家のお小遣いは、歩合制だ。その年、稼いだ賞金の3%を、翌年のオフに3ヶ月に分けて支払うことになっているのだが自身初の1億円を突破した勢いで、夫はお小遣いのアップを要求してみたのだが・・・。

すげなく断られた。
「1億円も稼いだんだから、ちょっとは上げてくれたっていいのにねえ・・・」と苦笑した夫。

おっとりと優しい性格の今野は、ちょっと辛らつな妻の言葉に力をもらった。

この日最終日は、スタート前に「あなたはまだ、1.7流ね」と、言われた。
完全な“二流”でもない。
でも、“一流”と呼ばれるには、まだ早い。
「ここで勝って1億円を超えて、ようやく1.2流かな」とキツいことを言われて内心、ムカつきながらも妙に納得している自分がいた。
「ゴルフを知らない人には、自分はその程度の選手なのだろう」。
そう思うことで、逆に発奮材料にしたという。

妻の願いを、叶えて今季2勝目。
これでようやく“1.2流”に昇格だが、今野にはまだまだ、課題が残っている。
残りの“0.2”をクリアして、崇乃子さんがいうところの“一流”選手になるためには、「ファンの人に正しい呼び方で、名前を読んでもらえるようになること」(崇乃子さん)。

デビューして9年。苗字の今野を、いまだに“こんの”と呼ぶギャラリーがいる。
9月のサントリーオープンの優勝で、かなり間違いも減ったというものの、「やっぱり、ときどき“こんの”と呼ぶ人がいて。誰もが、正しく呼んでくれるようになってはじめて一流だって、夫には言ってるんですよ」。

“いまのやすはる”の名を広く世間に知らしめるためにも。やはり、来年こそ賞金王を狙うしかないようだ。

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