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アコムインターナショナル 2005

デービッド・スメイルが完全優勝

1秒、2秒、3秒、4秒・・・まだ終わらない。長い長い、祝福のキス。ようやく唇を離すと、妻・シェリーさんが感極まって言った。

「こんなに難しいコンディションの中で戦って、4日間首位を守ったのよ! あなたこそ、この優勝にふさわしい選手よ!!」。

日本女子ツアーで1勝の経験があるプロゴルファーの妻の言葉には、説得力がある。

しかも今週は、深刻な腰痛を克服してつかんだ勝利だ。
この日最終日もたまらずに、思わず腰を抑えて顔をしかめるシーンが何度かあった。
そんな苦しい戦いにもかかわらず、「でも腰痛はむしろプラスだった」と言ってのけるしたたかさがスメイルにはあった。

痛めてから、これまでのおよそ3ヶ月間。
腰に負担がかからないようフォロースルーで体の回転を止める、いわゆるパンチショットでプレーを続けるしかなかったのだが、それがこの日、吉と出た。
台風17号の余波をもろに受けた最終日。
瞬間最大21.7メートルの強風にも影響を受けにくい、弾道の低いショットで安定したプレーを続けることができた。

一方で風のいたずらにあう不運もあった。
12番パー4。1メートルのパーパットを打とうとアドレスした瞬間に突風が吹いて、ボールが50センチほど動いてしまった。
1打のペナルティを食らって、ボギーを打った。

これに動揺した次の13番パー3では、ティショットを右に曲げた。バンカーに打ち込んだが「まだ、2位との差は十分あるのだから」。
強い精神力で、すぐに落ち着きを取り戻した。
この第2打を30センチにみごと寄せてピンチを切り抜け、続く14番パー4では7メートルのバーディチャンスを決めた。
積み上げた3打のリードをうまく使って、逃げ切った。

毎週、痛みを訴え続ける夫。
ただ海の向こうで祈るしかない日々に耐えかねて、思い切って2人の子供たちをベビーシッターに託し、この週きゅうきょ単身来日したシェリーさん。
毎日、18ホールをついて歩いてくれた。
「それが何より、心強かった」とスメイルはいう。

「いまさら、何も言わなくても分かり合える」というほど、信頼しあえるおしどり夫婦。
最終日のスタート前にも、シェリーさんから何か特別な励ましがあったわけではないが、ロープの外から思いはちゃんと届いていた。

「お願い、デービッド。勝ってあのときの悔しさを晴らして!!」。

6月のミズノオープンと、日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズカップ。
2週連続でプレーオフの末に2位に甘んじた。
あのときの嫌な記憶を、妻の目の前で払拭できた。

嬉しいツアー通算4勝目をあげたその足で、揃って子供たちが待ちわびる母国ニュージーランドへ帰る。
日本ツアーは、歴代チャンピオンでもある3週間後の日本オープンから復帰する。
「腰をちゃんと治して、帰ってきます」。
悪天候にもかかわらず、足を運んでくださった大勢のギャラリーに約束した。

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