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日本プロゴルフマッチプレー選手権 2003

トッド・ハミルトンとデービッド・スメイルとの決勝戦

出だしの2ホールで、いきなりの2アップ。精密機械のように正確無比なショットと パッ ティングで、 相手をジワリ、ジワリと追い詰めていく。どんなシーンでも、ピクリとも、表情を動 かさない。この日、スメイルに許したのは「24ホール目の1アップだけ」。このとき でさえポーカーフェイスを貫いて、つけ入るスキを与えなかった。
そんなハミルトンが、かすかに動揺を見せたシーンがあった。アップドーミーで迎え た34ホール目の16番パー4だ。
ティショットをプッシュアウトさせ、前足下がりのラフに打ち込んだ。それは、「野 球のティバッティングみたいで、僕がもっとも苦手とするライなんだ」。案の定、不 自然な姿勢からの残り110ヤードの第2打は大きくグリーンをショートした。球は、ピ ンまで17ヤードのグリーン手前のラフの中。
度重なるミスに、ハミルトンは思わず眉根を寄せた。普段は大きなストライドで、流 れるような歩行リズムが、そのときわずかに乱れていた。苛立ちを、隠し切れなかっ たのだ。
第3打地点にやってきたハミルトンは、迷った末にロブウェッジをつかんだ。グリー ンは複雑なアンジュレーションで、とてもカップを狙っていけるラインではない。
「ここはとにかく確実にパー狙いで・・・」なんとか冷静さを取り戻し、慎重に打っ た アプローチは
『ガチャンっ!』
派手な音をたててピンに当たり、なんと、そのままスルリ、とカップに吸い込まれて いったのだ。
ピンチが一転、チャンスに変わった。まだスメイルのバーディパットを残していた が、ハミルトンは、思わずこぶしを振り上げずにはおれなかった。
「だってもう、気持ちは次のホールへ行くつもりだったから。あれはほんとに、まさ か入るようなショットじゃないんだよ。自分でも興奮して、何が何やらわからなかっ たね」。
土壇場の一撃に動揺したスメイルは、バーディパットを外してあえなくゲームオー バー。3-2で計34ホールの長い激戦に、終止符が打たれたのだった。

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