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日本プロゴルフ選手権大会 2000

“プレイングマーカー”として、昨年度クラブチャンピオンの木下保さんがメジャーに挑戦。

慣れ親しんだコースが、一変していた。ラフがしげり、フェアウェーの幅は、普段の半分もないように見えた。ティグラウンドに立つと、いったいどこへ向かって打ったらいいのか、わからない。
しかし、「プロの方に迷惑をかけるわけはいかない。できるだけ18ホールを楽しみながら頑張ろう」と、木下保さんは気を取りなおし、8時25分、プロの井上雅之とともにスタートしていった。

決勝ラウンドは、2サムでのプレーとなるこの大会。出場人数が奇数になれば、当然、“一人組”がひとつできる。
大会3日目に湯原信光が腰痛で棄権したため、最終日の出場人数は63人。トップスタートの井上に、スコアをつけあう相手がいなくなった。そこで、井上の“プレイングマーカー”として登場したのが木下さんだ。
「大会が始まるまでに、『もしそういうことになったら、お願いしますよ』とのお話しは頂いていましたから、心の準備はしていましたけど…昨夜、お電話を頂いて、話しが現実になると、さすがに緊張するどころではなかったですね」。

木下さんは、昨年度のここ、カレドニアン・ゴルフクラブのクラブチャンピオン。ゴルフ歴20年、ハンデ3、ベストスコア73という素晴らしい腕の持ち主。
「でも、このコースじゃあそんなの通用しません。だっていつものコースと全然違う。選手のみなさんはいっつもこんなところでバーディを平気で出すんだなって、改めてプロのすごさを感じましたね」

木下さんは、「とにかく、ラフに入れたらたとえ残り50ヤードでも無理せず、まずフェアウェーに」というゲームプランに徹し、懸命に難コースと戦った。結局、バーディはひとつも奪えなかったが16番で残り120ヤードの第2打をピン2メートルにつけ、チャンスにつけるなど大健闘。最終18番は池ポチャしながらも、2メートルのボギーパットをねじ込み、アウト40、イン39。トータル79と、好スコアで1日を終えた。

「プロの試合、しかもメジャーという大舞台。一生に一度きりしかできない、貴重な体験をさせていただきました。きょうは本当に楽しかった」と木下さん。ホールアウト後は、ギャラリーの子供達にサインをねだられ(=写真)とまどいつつも、さらさらとペンを走らせながら、「これも生まれてはじめての経験」と笑った。