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日本プロゴルフ選手権大会 2025

福島出身のレッスンプロ・大瀧一紀がツアープロに紛れて得た気づき

大会主催の公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA)は、普段はシニアツアーを主管するほか、プロ資格を付与する資格認定テストと共に、レッスンプロとしての資質を問うティーチングプロテストを実施している。

その取得者の最高峰を競う「ティーチングプロ選手権」を毎秋実施。
さらにその勝者には、翌年の本大会の出場権が付与される。

今年は、ティーチングプロとして活動を始めて4年目の32歳、大瀧一紀(おおたき・かずき)が権利を得た。




プロテストも、ツアーの出場優先順位を争うJGTOのQTも、昨年まで4回挑戦して4回とも失敗し、今週が自身初のレギュラーツアー。
「この試合のために、一生懸命練習してきたのにこの結果」。
2日間で通算15オーバーは出場144人中142位での予選敗退に、落胆は隠せなかった。

前日の初日は、どうにか3つ獲れたバーディも、この日の第2ラウンドでは一つも持ち帰れず、「このセッティングに合わせる技術がなく大変でした」と、仕事場のレッスン場では自慢の豪打も活かせなかった。

ギャラリーに囲まれながらのプレーにも戸惑った。
アドレスに入った瞬間、ふいに訪れる静寂。「周りに凄いたくさん人がいるのに、打つ時、ぴたっと止まるじゃないですか。逆に不自然に感じて。ちっちゃい音が気になっちゃう」と、ツアープロには当たり前の光景に、むしろかき乱され「僕の集中力不足」と反省しきりだ。

初のレギュラーツアーで気づいたのは「みな100点のショットを出し続けているわけじゃない」ということ。
「僕のゴルフの基礎はティーチングで習ったことで構成されているけど、それだけじゃボケたショットになって通用しない。求められている精度が違う」と、体感した。
「シビアなセッティングに対応するにはもっと“点で点で”が必要」と、思い知らされた。


地元の応援団にも励まされ



福島県双葉郡の実家で被災したのは富岡高校を卒業して10日後だった。
静岡の親戚を頼りながらの避難生活を経て故郷に戻り、県内のゴルフ場で研修生に。

ツアープロを目指して練習を重ねてきたが、今は福島県いわき市にある練習場「Golf Studio Trinity」での個人レッスンを、生業にしている。

少しでも集客を増やそうと、大会出場に合わせてSNSもスタート。

カウントダウン動画で宣伝しながら本戦を心待ちに、試合の練習にも精を出したが、「不甲斐なさ過ぎて。また出たい」。
打ちのめされて火がついた。

この日のスタート前に、PGAの副会長で、レギュラーツアー5勝、シニア1勝の芹澤信雄にも「この空気を味わったらぜったいまた出たくなっちゃうよ」などと言われたが、本当にそのとおりだった。
「緊張しましたけど、めちゃくちゃ楽しかったし、試合の雰囲気は楽しいな」。

福島県から車で8時間かけて岐阜の谷汲まできた甲斐は十分あった。

※当初、大瀧プロの名前の漢字と高校名を間違えておりました。お詫びして修正いたします。申し訳ございませんでした