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エリートグリップチャレンジ 2023

木村太一が嬉しいプロ初Vを完全優勝で飾る!

11アンダー単独首位からスタートした木村太一がイーブンパー72でラウンド。苦しい最終ラウンドを戦い抜き、嬉しいプロ初優勝を手にした。

 

最終日の朝、緊張感はもちろんあった。ただ、やることはただ一つだけに絞られていた。

2日目が終わってからコーチの内藤雄士氏に言われたことは「他の人のスコアは気にしてもコントロールすることができない」ということ。要するに自分のゴルフをしろということだ。最終日、木村はそのアドバイス通りにひたすら自分と向き合い続けた。

 

「振り返れば緊張感があって体は硬くなっていたのかもしれません」。そう話すように前半は5番、8番とボギーが2つ先行する苦しい流れ。この時点で後続から追い上げていた吉本翔雄に逆転されていたが、自分のゴルフと向き合うことだけに集中していた木村は、ボードを見ることを一切せず、決めた目標に対して気持ちをブラさずにプレーしていた。

 

木村の気持ちに変化が起きたのは16番ホール。難所と言われる終盤のキーホールをティショット、セカンドショットとなんなくこなした後、パッティングをする前にスコアボードを見てしまった。このとき、2位以下とは3ストロークが離れていたことを知り、無意識に“守りたい”という気持ちが芽生えてしまった。

そんな気持ちのままでむかえた17番パー3では、グリーンに乗ったものの25mほどのパットが残り、これを3パット。同組の川上優大が16番バーディのあと、17番でもバーディとしたことで、木村との差を一気に1ストロークに縮めてきた。

 

こうなると流れ的には木村完全不利の状況だったが、この日の木村は冷静だった。17番での自分の気持ちの弱さから招いたボギーを振り払うかの如く、18番ホールのティショットを最高の位置へ運んだ。17番のボギーで今日自分が一番やらなければいけないことに再び気づいたからこその会心のティショットだった。バーディ締めとはならなかったが、それでも3日間首位を守る完全優勝は立派のひと言に尽きる。

 

日大時代の同期、桂川有人、清水大成らの活躍に遅れをとる形になっていたが、ようやくこれでスタート地点に立つことができたと言う。

「彼らは学生時代からもちろんうまかったですし、プロ入りしてすぐ活躍することもわかっていたし、プロとしての雰囲気も持っていた。それについていけなかった悔しさはありましたし、焦りもありました。でも、コーチの内藤さんをはじめ、周りの多くの人に支えられて頑張ってこられたと思います。この1勝は本当に嬉しいです」。

 

プロとして大きな大きな1勝を手にしたわけだが、木村が言うようにこれで終わりではなく、スタート地点に立ったに過ぎない。次に目指すのはシード権獲得とレギュラーツアーでの優勝だ。さらに高みを目指す戦いがすでに始まっている。