Tournament article

ダンロップフェニックストーナメント 2020

惜敗をお詫び。石坂友宏は負けて爽やか

©JGTOimages
1999年のJGTO発足後、初の大学生同士、及びツアールーキー同士のプレーオフが決まった時、石坂は18番のグリーン奥に、揃いのユニフォームの一団を見つけた。

これから対戦する、金谷の大学後輩たちだった。
「アウェイの戦いになる」と、石坂は考えた。
「みんな、金谷さんを応援しに来たと思った」という。

それは、確かに違いない。
だが、完全アウェイではなかった。
1ホール目の石坂の奥3メートルのバーディチャンス。
「入れ、入れ…!!」と、大声がした。
3ホール目のピンそばのバーディには、先に2.5メートルのチャンスを沈めていた金谷と同様の拍手喝さいが起きた。

石坂も、日本ウェルネススポーツ大に在籍しながら、プロになったがみなジュニア時代から、共に戦ってきた仲間だ。

「負けて泣いたり、勝って一緒に喜んだり」。
その中で培われたフェアプレーの精神は、チームや大学の垣根を軽々と超える。

惜敗した4ホール目は、「ティショットを置きに行ってしまった」と、右の林に打ち込み2打目は出すだけとなった。フェアウェイからの第3打も、パーオンに失敗。グリーン奥のラフからきわどいパーは拾ったが、グリーン奥から3打目を、ピンそばに寄せた金谷のバーディに敗れた。

2日目から首位を守ったが、初優勝には惜しくも届かなかった。
幾度となく迎えた勝利のチャンスも生かせなかった。
「でも、そんなに差があるわけではない」とのひそかな手ごたえを握りしめて静かにグリーンを降りた。
人ごみを避けて、引き上げる石坂を見つけて、学生たちが駆け寄ってきた。
次々と、右腕を突き出しグータッチで健闘をたたえてくれた。

「負けたのは悔しかったけど、僕のことも同じように応援してくれたのは、本当に有難かった。凄く良い仲間」。

金谷とは、全国高校選手権以来の直接対決という。
「強いし、めちゃくちゃいい人です。金谷さんを目標にしている」。
尊敬する先輩と、プレーオフを含めた76ホールを戦い抜き「負けて悔しいですけど、金谷さんと決勝2日間を回れて、プレーオフまで行けたのは嬉しかった。めちゃくちゃいい経験。飛距離だけではなく、今以上に小技を磨いていく。精度を高めて、マネージメントをしていきたい」。

悔しさと共に、プロ3戦目で2位の収穫をかみしめながら、運営本部やJGTOルームなど、大会用の仮設プレハブが立ち並ぶ辺りまで戻ってきた石坂は「遅くまでかかってしまってスミマセン…!」。
関係各所で、プレーオフ4ホールの敗退を詫びて歩いた。
21歳の新人学生プロは、負けてなお律儀で爽やかだった。
  • 僕のことも応援してもらって、本当に嬉しかったです

関連記事