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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2012

藤田寛之は単独首位にも「これで決まったとは微塵も思っていない」

なんとかひとつ上の先輩を引き留めた。賞金ランキング順に回るこの日初日は、追う谷口との直接対決。しかし、藤田のあまりのゴルフに「意気消沈した」という谷口は、「もうハーフで帰ろうかな・・・」と言い出した。
「まだ始まったばかりじゃないですか!」と励ましてもあまり、説得力はなかったかもしれない。

谷口は、2打目が傾斜を転がり落ちてあわや池の3番でボギーを打ったのをきっかけに、伸び悩んでいた。その横で、藤田が前半は圧巻の29。

2番で、1メートルはスライスするという13メートルのバーディトライを先に決めた。谷口は、それよりも近くにつけて、「こっちは入れようと、必死にラインを読んでいたところだったのに」と、平凡なパーに終わって唖然とした。
3番でも、谷口のトラブルを横目に余裕の連続バーディに、「藤田くんはショットも安定しているし、パットもどこについても入りそう。隙がなさすぎて、がっかりする」と、早々に谷口の戦意を喪失させた。

「藤田くんの、あんな凄いのを見たのは初めてかもしれない。怖い選手ですね」と、谷口を戦々恐々とさせた張本人は、「今日も、普通に回ってきただけなんですけど」と、さらっと言う憎らしさ。

6番では247ヤードの2打目をスプーンで左3メートルにつけて、イーグルを奪うと早くも完全に、谷口を突き放した。
朝の晴天が一転、曇天の後半は藤田も「13番あたりからどっと疲れが出た」とは言いながらも、3つのバーディに、谷口はその13番でOBを打って、差はどこまでも広がるばかりだ。

藤田が今大会で単独16位以上なら、谷口が何位でも藤田の賞金王が決まる。
「俺は優勝するしかねーんだろ。優勝ないからもう帰る」と言って聞かない谷口に、「そうおっしゃらずに」と必死に引き留めても、いきなり初日から、大会レコードタイ記録の61で貫禄を見せつければ、さすがの谷口も諦めて、道を譲るしか手がないではないか。

「今日はつきあわされて大変」と、嘆く谷口。大会は2日目から成績順に組み替えられて「やっと藤田くんとお別れできる」と、嘆息した。
「あんなのまた見せられたら自信がなくなる。賞金王も諦めました」と、いつも強気な男が初日にしてまさかの敗北宣言・・・?!

だが、当の藤田は力強く首を振る。
「何を根拠に、まだ初日にもう決まったという空気になるのか。終わるまでは分からない」。それを改めて思い知らされたのは、今年のブリヂストンオープンだ。
「ほぼ自分が勝てるという台本を作ったのに。そのとおりにはならなかったじゃないですか」。
谷口が、最終ホールのパー5で3打目を直接入れて、逆転負けを食らった記憶。
「危険です」と、絶対に過信はしない。
「3連覇には120点のスタートですが、今日のゴルフの内容は90点」と、自分に満点など絶対につけたりしない。
「今日はフェードが打てなかったので、マイナス10点」と、たとえ栄冠を間近にしても底抜けの向上心もそのままだ。

「これで決まったとは微塵も思っていない」と、藤田は言った。
「マラソン選手が先頭を切ったのに、息切れというのは・・・。ペースは落としても、最後まで確実に第一集団に残らなければ」。
どこまで極めようとも、根っからのマイナス思考もそのままだ。

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