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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2012

藤田寛之は単独首位に「自分が一番驚いている」

現在、賞金ランキングでトップを走る43歳だが今週は「抜け殻」。ここ5年くらいはずっと、「絶対に勝つ」と言い続けて臨んでいる日本オープン。先週は、自身初の日本一のタイトルをかけて、今年も相当に入れ込んだ。「前の、前の週からそこに合わせて徐々にピークを持っていって・・・」。

連日の難条件にも初日に9位タイ。2日目は3位タイ。3日目は7位タイ。順調に来た、との手応えがあったからこそ、落胆も大きかった。いよいよ最終日に9番で、木に当てたティショットがOB。トリプルボギーを打った。

「その時点で今年の僕の日本オープンは、終わったと思った」。

それでも集中力だけは切らさずに、やっているつもりでも意志に反して「体はどんどん動かなくなっていきました」。悲願のタイトルは「また来年」。気持ちもすでに切り替えているつもりでも、「集中力が散漫で、どっか抜けているような感じがする」と、今週もまだ、そんな状況を引きずったまま、開幕前日の水曜日に苦笑いを浮かべていたばかりだった。

もちろん、手を抜くというわけではない。ただ、「先週への思い入れが強すぎて。それとのギャップが生まれてきている。こんな現象は、今年初めて」。一時的な燃え尽き症候群みたいな感じだろうか。

「気持ちが抜ければ、体の疲れもより強く感じて。今週は、モチベーション不在のまま初日を迎えます」と、言っていた選手が2位と2打差をつけて、初日にいきなり単独首位につければ「自分が一番驚いている」と、目を剥くのも当然だ。

ツアーはこの時期、日照時間の関係で、出場選手が減ってこれまでは午前と午後に分かれていたスタートが、アウト・インの午前のみになる。その分、ハーフターンで待ち時間が発生する。

「打ってから一気に加速していく」という先週の高速グリーンから、この日の袖ヶ浦は朝から雨模様に「湿気と粘り気があって。打ってもスピードが出ない」と、前半はそのギャップに苦しんで15番では10メートルのバーディパットを3メートルもオーバーして3パット。
インの9ホールを終えて、インターバルはパッティンググリーンで、「ミドルとロングパットの練習をした」。わずか40分あまりの時間を活用して、もともとパット巧者が狂いがちだった距離感を、ぴったりと合わせてきた。

後半は1番で8メートルのフックラインを決めると、最後の9番は今度は8メートルのスライスラインもねじ込んで、一気に5つのバーディラッシュにつながった。

それでもなお、「先週の温度に比べれば、熱は低い」と、いまの自分のテンションをそんなふうに表現した藤田。
「でも、先週は温度が高すぎたから空回りしたのかも。もしかしたら、これが本来の自分なのかも」。

どんな場面でも、一喜一憂することもなく、常に同じ温度を保てるのがこの選手の何よりの強み。
初出場の95年をのぞいて、昨年まで16年続けて予選落ちゼロのここ袖ヶ浦で、43歳の安定感が今年も光りそうだ。

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