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VanaH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント 2012

藤田寛之がホールインワンを達成

思わずクラブを放り投げていた。12番は184ヤードのパー3で、24度のユーティリティ。「久しぶりだったんでね」。

2008年の日本オープン以来、5回目のホールインワン達成に他の選手とハイタッチで喜んだ。

駆けつけた家族も喜んだ。
「親戚のおじちゃんたちが2人ほど」。しかし、そこに父親の姿はなかった。
せっかく年に一度の地元福岡県でのこの大会も、昨年は足を骨折して応援に来られなかった寛実さん。
今年は2年ぶりの観戦も、昨年は重ねて大病を患ったという73歳には、やはりこの酷暑はきつかった。

息子の快挙の瞬間は、会場内の医務室のベッドの上。
「熱中症で、4時間くらい倒れていたみたいです」。
容体を気遣いつつ、プレーに集中した。

コース特有の高麗グリーンは、「10メートルが、2メートルくらいショートする。2メートルオーバーの感覚で打ってようやくカップに届く」と、見た目と実際のタッチのギャップに苦しみながらも、この日は66で回って、通算9アンダーは7位タイ浮上。

寛実さんは、1日空けてまた最終日にコースを訪れるという。
「もう、ついて歩くのは無理なのかもしれない」。
体調を思えば、無理はさせないほうがいいのかもしれない。

「でも今日だって、僕のプレーを見られるのが嬉しくて、ずいぶん早くから会場に来ていたようなので」。
数年前までは、息子がどんなに良い成績を出しても絶対に認めなかった“頑固オヤジ”だ。
「それが、今では周囲に“自慢の息子”と言ってるらしい。そういうのを伝え聞くと嬉しくて。俺の活躍が、オヤジの生き甲斐になっているのは間違いない」。

そんな父親の体力の衰えを痛感するにつけても、気は逸る。
「早く見せてあげないと」。
いつも藤田が「もっとも勝ちたい試合のひとつ」に数えるこの「VanaH杯KBCオーガスタ」での初タイトル。
「そのためにも、パットが入れられないと、話にならない」。
恩返しの1勝は、高麗グリーンの攻略がひとつ、大きな鍵を握る。

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