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キヤノンオープン 2011

やはりV5を支えた石井コーチが「久保谷さんは、努力の人です」

勝ってなお、ぼやきまくった優勝会見も、その中で2点だけ、久保谷が自分をほめた場面があった。2002年の日本プロでツアー通算4勝目をあげて、それから9年間のブランクで培われたものだ。

ひとつは精神力。「球に当たらない、左にしか行かない」と、悩みながらのV争いは、「若いころなら、完全に投げていた」。
今年39歳。プロ17年目。
「技術は年々思うようにいかなくなるけれど、その中でいかに気持ちを抑えていくか。この歳になって怒ってもしょうがない。いつかいいことあるかもしれない、とにかく落ち着いてやろう、と。気持ちの面では、前より強い」。

最終日は土壇場でフェアウェイを捕らえた最後の2ホールも、「なんでここだけ真っ直ぐ行ったのか」と、自嘲めかして言いつつも、「曲がるもんなら曲がってみろと。もう行くしかないと思って打てたので。その辺も若いうちとは違う」とプレッシャーの取り扱いも、心得たものだった。

そしてどんなに思うようにいかずとも、ひつこくやり続ける忍耐力。
「まったく上達せずに、悩んでますけど練習だけはするんです」と言った。
その優勝スピーチを、石井忍コーチが裏付けた。今年から、本格的に契約を結んで二人三脚で、スイングの向上に励んできた。

久保谷が望んだ。「とにかくストレスのないショットがしたい」とのオーダーに応えようと、知力の限りを尽くしてきた石井さん。「久保谷さんは、ほんとうに馬に食わせるくらいに毎日人一倍、球を打ってる。努力の人です」。

この週も、大会前日の水曜日は大雨が降りしきる中で、あたりが真っ暗になるまで誰もいない練習場に居座ったという。
「やっと報われました」と、石井コーチは久保谷の首にしがみついて、号泣した。
無二の相棒の体をしっかりと抱き留めながら、「今まで祝福するほうばっかりだったので。たまに祝福されると恥ずかしい」と、自分は涙ひとつこぼさず、むしろ9年ぶりの優勝にひたすら照れまくっていたのもまた、この人らしい。