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ANAオープンゴルフトーナメント 2011

16歳の伊藤誠道くんが首位キープ

@マークは、この日もリーダーボードの一番上に“アマチュア”の印が光る。ますます現実味を帯びてきた。先輩に続く高校生アマのツアーV。杉並学院高校の1年生が、2日目に続いて首位を守った。この日はまだ3日目とはいえ、決勝ラウンドを最終組で回るのは、もちろん初めての経験。「すごい緊張感で、余裕のかけらもなかった」との本人談も、にわかには信じがたい。

1番で、2.5メートルを沈めて幸先の良いスタートにもあいかわらず謙虚に自分をいさめる姿があった。
「最初に取ると、いつもろくなことがない。ガツガツ行って失敗する。今日は苦しいゴルフになる」との冷静な分析は的中した。
7番で深いラフから寄せきれずに、この週初めてのボギーを打って「振り出しに戻った。11番まですごくしんどくて。時間が流れるのが遅いな、と」。

辛抱が続いた。同組の小田と松村が隙を突いて追いかけてきた。特に飛ばし屋の小田は、「60ヤードくらい置いてかれる時がある」。飛距離の差に「力んでる」と、感じた。「2人ともすごく飛ばすので、自分もガツガツ行っている。落ち着かなければ」と、言い聞かせた。

12番パー5でも立て続けにティショットを左に曲げて、我に返った。「いくら頑張っても、俺が2人に勝てるわけがない」。冷静に林から出して、80ヤードの3打目勝負は最初に60度ウェッジを持ったが、考え直した。

「無理をせず、背伸びをしない。52度で軽く打とう」と原点回帰のバーディチャンス。1メートルをきっちり沈めて「あのとき持ち替えた僕。素敵です」。無邪気な自画自賛で流れを自分に引き寄せた。
13番で、3メートルのフックラインは「勝負をかけた。気合で入れた」。連続バーディでたちまち息を吹き返して、いよいよ16番で再びプロから首位を奪い返した。

奧から15メートルの長いバーディトライは、「僕の歩測で17歩」。フックして、最後に下ってスライスは、入れるつもりもない距離だ。
「ラインも完璧。タッチも完璧。完璧尽くしのパットでした。あれがほんとにカッコ良かった」とあどけない笑顔が、この日いちばん輝いた場面。

前夜、大親友と電話で話した。「テレビを録画しておいてね、と。自分を見るのが好きなので」。あとからあの堂に入ったガッツポーズをスローモーションで繰り返し見るのが今からとても楽しみだ。
また今朝までにミクシーやツィッターに、山のように書き込まれたメッセージ。「文化祭は俺たちで頑張るから。ゴルフで頑張ってね」との級友のフォローに、何よりの形で応えられることが出来た。

ついに正真正銘の最終日最終組。アマチュアが、2日目から連続で首位をキープしたのは99年以降の記録ではこれが初。あの石川遼も、15歳の史上最年少Vは最終ラウンドの追い上げで勝った。3日間も続けてプロの重圧を浴びることはなかった。もし勝てば、先輩とはまた違った初勝利の味となる。

しかし当人は、こともなげに言う。
「今日も、明日も、3日間ともやることは同じ。明日も、18ホールの後に19番、20番ホールまであると思って全力でプレーする。楽しくやる。そしてやるからには優勝を狙っていきます」。“遼クン”の後継者候補が気合を入れた。

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