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裵相文(ベサンムン)が日本ツアー初優勝

近藤のプレーを気遣って本人も初めてという、ウィニングパットの“お先に”をした
韓国勢の勢いは、もはやとどまるところを知らない。ジャパンゴルフツアーの第12戦は、またもや韓国人のチャンピオン。これで5人目、初優勝は4人目。しかも先週の趙珉珪(ちょみんぎゅ)に続いて2週連続のV奪だ。

近藤共弘との競り合いは、思わぬ形で終止符が打たれた。裵(ベ)が1打リードで迎えた最終18番。2打目は互いに刻んで、3打目勝負という場面。

先に打った近藤のボールがほとんど真横に飛んだ。グリーン脇の林に打ち込む大トラブルに、裵(ベ)のプレッシャーはそこで完全に消えた。「気持ちが楽になった」という。

最後は余裕のタップイン。ウィニングパットになると確信した短い距離はすでにアジアで3勝、韓国では4勝を経験している本人としても、優勝シーンの恒例行事として最後まで取っておいても良かったが、「近藤さんのラインのジャマになるから」。今回ばかりはあっさりとお先に沈め、あとはグリーン脇で悠然とタオルで汗を拭きながら、ゲームセットの瞬間を待てば良かった。

通算22アンダーは、昨年に並ぶ大会最多アンダータイ記録での優勝だ。首位タイで迎えた最終日は1番のバーディで単独首位に躍り出ると、近藤の追撃をことごとく封じた。9番のバーディでいち早く20アンダーの大台に乗せて、初日からの首位を守って逃げきった。

母親の薦めで11歳からゴルフを始めた。身長180センチ、体重77キロはしなやかで、バランスの取れた体格にも恵まれて、本人は野球選手になりたかった。
「でも、母親に反対されて」。
内心、渋々従ったが母の助言は正しかった。韓国ツアーは2008年から2年連続の賞金王に。2009年の韓国オープンでは連覇を達成して、「メジャー男」ともてはやされた。「レベルの高いステージでさらに勉強を」と、日本ツアーは昨年から本格参戦した。

ジュニア時代からしのぎを削ってきた同い年の金庚泰(キムキョンテ)が徹底して静のゴルフなら、裵(ベ)は全面に気持ちを出して戦うタイプ。母国では「飛ばし屋」と評判の飛距離を武器に、コースではガッツポーズを振りかざして喜んだり、ミスには感情あらわに怒ったりと忙しい。
そんなふうだから、もちろん金へのライバル心も隠さない。
「キョンテはドライバーもアイアンも、パットもすべてが上手い」と、ジュニア時代からしのぎを削ってきた戦友の才能を高く評価しながら、「でも僕も実力があるから」と、さらりと言い切る自信家だ。

いまもっとも成長著しい韓国勢の中にあって、母国では金と居並ぶ強豪と称されながらも今季はシード1年目の日本ツアーで幾度かチャンスを逃すうち、ほかの若手に次々と先を越されて「絶対に負けられない」。
“賞金王”のプライドが揺さぶられた。“大本命”が、満を持して勝者リストに名を連ねた。

今季は年頭から、年末に行われる米ツアーの予選会Qスクールに挑戦すると決めている。それもあって、なおさら早く「日本での1勝が欲しかった」という。
憧れの選手はタイガー・ウッズ。「でも最近、彼は調子が良くないから。次のターゲットを探しているところです」と、おどけて笑った25歳。
「今年はこれに満足することなく2勝、3勝と重ねたい」。夢の舞台に立つ日まで、まだ時間はたっぷりある。これを機に、日本で思う存分に名前を売ってから、旅立つつもりだ。
  • 「僕の日本語の先生でもある」という専属キャディの山根彰さんと健闘をたたえ合った
  • 大会にご協力くださったボランティアのみなさんにも胸一杯の感謝の気持ちを

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