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The Championship by LEXUS 2010

山下和宏は「明日も前へ前へ」

たとえ逆境にあっても笑顔を忘れない。単独首位で迎えた17番で、右の林へ打ち込んだティショットは、おそらくそのまま木になった。誰も落ちてきたことを確認出来なかったし、ならば枝に引っかかったままになっているであろうボールも、見付けられない。

ロストボールのダブルボギーは仕方ない。むしろ「ダボで終われて良かった」と満面笑みで前向きに、その分反省も忘れない。

やはり右に曲げた14番のことが頭にあった。17番も、同じようなアゲンストの風に「ドライバーにしようか、スプーンにしようか」。
決めきれないまま、結局スプーンで「迷いながら打っていた。逃げたというか、気持ちが足りなかったと思います」と、みすみすミスを呼び込んだ。

最終日こそ、迷いを断ち切る。

昨年9度のトップ10入りも、最高順位は9月のANAオープンの2位タイだが勝った谷口徹とは差が大きく開いていたから、実感は薄かった。

それよりも、正真正銘のV争いを味わったのは最終戦だ。賞金ランク25位内の資格で初めて出場権を掴んだ12月のゴルフ日本シリーズJTカップで単独3位。
「もっとも優勝に近い位置で回れたこと」が、大きな自信となった。

それまでは、少しでも上位につけたら「今の順位を守ろうとか、安全すぎるゴルフをしてしまってた」。
その考えなら確かに安定した成績を残すことも出来ようが、それではいつまでたっても頂点には到達出来ない。
「常に上を見て、前へ、前へという気持ちを持ってやらなければ」と、痛感させられたのが、同大会だった。

ひとたびチャンスを迎えれば、行けるところまで上を狙っていくのがプロだ。
「今までと違って、明日は最後まで、前だけを見て回れたらいい」と、改めて胸に誓った。

この日、66をマークした丸山茂樹の言葉も励みにしたい。
ほとんど無風、快晴のこの日のコンディションは、松林にセパレートされた難コースにも飛ばし屋の選手が上位に名前を連ねたが、「ちゃんと技術を持っている選手も上にいる」と、丸山が名指ししたのが山下だった。

伝え聞いた本人は、たちまち笑み崩れて「世界中を見てきた人が、言ってくれたから。そう思っちゃってもいいのかな。自信を持ってもいいですか」。
もちろん、YESだ。
だからこそ、いまここで初V目指して戦っている。

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