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日本オープンゴルフ選手権 2010

藤田寛之は「ショットがこれじゃあ」と言いつつも単独2位に

毎年、厳しいセッティングに苦しめられるこのゴルファー日本一決定戦は、確かに例年よりラフの長さが短いとは思うが、その分、極限までフェアウェイが絞られて、「フェアウェイキープにこだわると、とても無理」というほど、難条件には変わりない。

「アンダーパーで回れたら最高。イーブンパーならナイスプレー」と言い聞かせて初日を出ただけに、この日の5アンダーは「自分でもびっくりのスコアです」。

毎週、試合には3本のパターを携行している。
1本目はいわばエースというべき「ピンアンサー」。
2本目の「“控え投手”はマレットのセンターネック」。
そして3本目が「“抑えのピッチャー”L字型」。

スタート前のイメージ重視で、この3本の中から選び取る。
しかしマレットは先週、登板させた時点ですでに違和感があったから、この日は最初から候補には挙がらなかった。

ピンアンサーは、今週に限っては「ちょっとどこを向いて構えているか、分からない。タッチが出ない」。
そこで思い切って、バッグに入れたL字型が、「今日はイメージ以上に良い仕事をしてくれました。」。
実に1年ぶりの採用がはまった。自他共に認める得意のパッティングがますます冴えた。

「グリーンに上がるまでは、僕も大変でしたけど、グリーンにのぼってからは、調子が良くて」。

アプローチも好調で、前半の12番では右ラフから45ヤードの3打目を入れて、イーグルを奪った。18番では、1メートルのパーパットを拾った。
折り返して1番では5メートルのパーセーブをしのいだ。

しかし、これほど好スタートを切りながら、やっぱりこの男は満足などしていないのだった。
「よくやってますよね、こんなショットで」と、なかば自嘲気味に言い捨てた。

「確かにパットは上手い、と褒めてくれる人はいるけれど、僕にショットが良いと、言ってくれる人はいない」と、しょんぼりと、「ショットさえ良ければ最後の最後まで、争えるのに・・・」と、穏和な表情も曇りがちだ。

いつも課題のショットで悩み、試行錯誤を続けているのは、「優勝争いの中でこそ、ショットの安定性が不可欠」という、自分の中での決め事があるから。師匠の芹澤信雄に「ちょっと、突き詰めすぎる」と呆れられても、そこは譲れない。

「壊しては作り、壊してはまた作り」。
それでもなお、先週は4日間で「3回もシャンクした」と苦笑いで、「賞金ランク2位の人がシャンクって、おかしくないですか?!」と、訴える。
「今日だって、フェアウェイに3回しか行ってない」。

喉が出るほど欲しいこの日本一のタイトルも、この3年間は4位、10位タイ、4位タイとトップ10入りが続いているが、「全然、自信は持てません、ショットがこれじゃあ・・・」と、溜息をつく。

萎えそうな心を懸命に奮い立たせた。
「ショットが良い人が、必ずフェアウェイに行けるわけじゃないし、スコアが良いわけでもない。勝てるわけでもない」。自分に言い聞かせて2日目もコースと、そして何より自分自身との格闘は続く。

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