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東建ホームメイトカップ 2009

山下和宏「まずは自分の殻を破ります」

今季、初シード入りを果たした喜びを、改めて噛みしめたのは開幕初日だ。丸山茂樹と藤田寛之。トッププレーヤー2人との組み合わせ。

特に丸山は「あこがれの人」だ。
その人と同じステージに立ち、ましてラウンド中は丸山のほうから気さくに話しかけてくれる。
「もう、それだけで嬉しくて。以前は見向きもされないようなところにいた僕が、少しずつ着実にステージをあがっている」。
そのことが実感できて、自信が沸いたという。

スター選手の気分を味わうこともできた。
予選ラウンドは、スタートから両サイドに鈴なりの大ギャラリー。
「今までの僕じゃ、考えられない状況だった。丸山さんや、藤田さんは毎回この中でプレーしているんだな、と」。
しかも終始、落ち着き払っている2人に内心で舌を巻いた。
本人はといえば、緊張で我を失いかけたというが「その中でも我慢できたのが良かった。訳が分からなくならずに済んだんです」。
それも、確かな成長のあとと言えるだろう。

シード元年に向けて、このオフは体力強化と弱点克服に時間を割いた。
昨年、所属契約を結んだ兵庫県丹波市のザ・サイプレスゴルフクラブの大西久光・代表取締役社長に痛いところを突かれたからだ。
「山下くんのデータを見てみたんだけどね」と切り出した大西氏は「ドライビングディスタンスの割に、フェアウェイキープ率が悪いね」。

平均268.45ヤードの87位に対して、53.26%はランク58位に返す言葉もない。
合わせて「山下くん、ゴルフは距離感のゲームだよ」と諭されて、目が覚めたという。
今週のフェアウェイキープ率は3日間トータル5位こそ、練習の成果だ。

彼を良く知る関係者なら、誰もが「好青年」と口をそろえる。
礼儀正しく謙虚で堅実な35歳は、首位と1打差の3位にも今時の若手のように、「優勝を狙う」などと、大きなことはまだとても言えそうにない。

当面の目標は、まだ一度も実現したことのないトップ10入り。さらにトップ5をめざして「次の目標はようやくそれから。まずは自分の殻を破ります」。
階段は一段一段、踏みしめながら登るたちだ。

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