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第133回全英オープンはトッド・ハミルトンがエルスとのプレーオフを制してメジャー初制覇!

あれは、予行演習だったのだろうか。
昨年の日本ツアー『〜全英への道〜ミズノオープン』。国内ツアー10勝目をあげて、岡山県の瀬戸内海ゴルフ倶楽部の18番グリーンで掲げたカップは、R&Aから大会に贈られた、全英オープンと同じ型のクラレットジャグ。

その1年後に、今度はオリジナルのカップを掲げているハミルトンを、いったい誰が想像できただろうか。

1打差首位でスタートした最終日はミケルソンやウッズら優勝候補が次々と脱落。最後は、同組のアーニー・エルスとの一騎打ちとなった。

「・・・でも、自分でも不思議なくらい、今日は1日落ち着いてやれたんだ」。
まだ世界ランク50位にも入ってない選手が、同ランク2位の選手を相手に、堂々と渡り合った。

1打差で迎えた本戦の18番は、ティショットを左に曲げてボギーを打った。
パーに収めたエルスに追いつかれて突入したプレーオフ。
全英オープンならではの、1、2、17、18番の計4ホールのストローク方式は、その2ホール目にボギーをたたいて1オーバーのエルスに対し、イーブンパーでいよいよ最終ホールを迎えた。

フェアウェーど真ん中から、手前4メートルのバーディチャンスにつけたエルスに対し、フェアウェー右サイドからの第2打を、グリーン手前にショートした。
絶体絶命のピンチにハミルトンが迷わずバッグから抜いたのは、14°のユーティリティアイアンだった。

ショット、アプローチを問わず、今週のリンクスコースで大活躍してくれた信頼のおけるこの1本。
放った第2打は、乾いたグリーンを手前から滑らかに転がってOK距離にピタリとついた。

このみごとな寄せに、エルスの表情が見る見る赤くなる。慎重に慎重を重ねて打ったバーディパットは、カップをそれた。日本からの“逆輸入選手”が頂点に立ち、人目もはばらからずに大声をあげた。

「ヤッホ〜!!」。

昨年までの11年間。日本ツアーで重ねてきた苦労が報われた瞬間。
この日1日に貫いてきたポーカーフェイスが一気に弾けた。
キャディと抱き合い、妻ジャッキーと抱き合った。
敗れたエルスと、交わした握手。
初めてのぞむ、メジャーの優勝インタビュー。クラレットジャグへのキス。
美酒に酔うハミルトンに、ギャラリースタンドから歓声が飛ぶ。

「トッド、カップに触らせてよ!!」。
ファンの声援に応えて、クラレットジャグのお披露目式。トルーンの18番グリーンを取り囲む巨大スタンドを、グルリと1周行進だ。

「僕のように、どこの誰だが分からないような人間がメジャーでも勝てる・・・それはきっと、他の若手選手にも大きな励みとなるでしょう。
今回の優勝で、これから1週間は眠れない日が続くと思うけど、それも嬉しい悲鳴。このままマジックが続いて、次は今年のライダーカップの代表メンバーに選ばれたりしたら・・・それこそ最高だね」。

昨年、自身8度目の挑戦だったファイナルQスクールを突破して、初の米ツアー出場権を手に入れた。ルーキーイヤーの今年3月には、ホンダクラシックでツアー初優勝。
そして、手にした初のメジャータイトル。
ずっとこの日を夢見てがんばってきた。長い下積みの時代もけしてあきらめず、自分を信じて努力を続けた結晶だった。

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