記事

「今年こそ、後悔したくない」片山晋呉は、そんな思いに突き動かされて…

昨年の最終戦『ゴルフ日本シリーズJTカップ』。その翌日に白木氏のもとへ、さっそく電話を寄越した片山は言った。
「先生、今年こそ後悔したくないんです、よろしくお願いします!」。

昨シーズンのオフ、トレーニング中に足首を痛めるアクシデントがあった。おかげで、思うように体が動かせず、腹筋や背筋などの基本的なトレーニングしかできなかった。

公言どおり、どうにか自身2度目の賞金王の座を射止めたものの、そのツケはしっかりとまわってきた。シーズン終盤には体調を崩し、最終戦ではそれこそ体を引きずるようにしてプレーした。

最後の最後に無様な姿をファンにさらしてしまったことが、片山には無念でならない。
「今年は同じ失敗は繰り返さない」。
そんな思いに突き動かされて片山は、例年より2週間以上も早く、白木氏のもとへやってきた。

本格始動のこの日1月12日は底冷えのする中、朝9時からグラウンドに出て、日がとっぷりと落ちるまで汗を流した。

年々ハードを極めるメニューは、片山と白木氏がアイディアを持ち寄って、共同作業で作られる。
通常のマシーンを使った筋トレから、まり投げ、サッカー、テニス、トスバッティング、左手のみで行うバドミントン…。
中でもいま、米ツアーでもブームというバランスボールを使ったメニューは白木氏の考案で、最近の片山のお気に入りだ。

それらなにげない動きの中にも片山は、実際にスィングするときのヒントを次々とつかんでいく。今月1月20日から開始予定のラウンド合宿。そこで実践してみたいショットのイメージは、一見ゴルフとはかけ離れたこれらの動作から、体現していくのだ。

白木氏は、そんな片山からかたときも目を離さない。
片山がサッカー練習に入る直前、将来のスポーツトレーナーを目指す院生たちに、すかさずテーピングを巻くよう命じた。昨年のような、思わぬケガを防ぐためだ。

一昨年前、学内に約11億円をかけて建設された体育総合実験棟、通称『SPEC』内ではただむやみに体を動かすだけでなく、全方向から画像解析できる最新機器『バイコム』を使って、スィング時の体の動きを科学的に割り出したりという試みもされる。

これ以上ない恵まれた環境と完全なバックアップ体制があるからこそ、片山は安心して体作り、スィング作りに打ち込んでこられたのだ。

「…僕ひとりでは、煮詰まってしまって、とてもここまで出来なかったと思うけど、ここにくれば、みんなとわいわい楽しみながらたのしく体を鍛えることができる。白木先生はじめ、誠心誠意でサポートしてくれる院生のみんなには、感謝してもしきれませんよ」(片山)。

「晋呉は、まさにゴルフの天才。なんにでも真剣に打ち込む姿勢や、逆境にも結果を出すメンタルタフネスぶりには、僕ら側にも学ぶところがたくさんあります」(白木氏)。

お互いを心から尊敬し、信頼を寄せる気持ちが“賞金王”を、さらなる高みへと引き上げていく。

関連記事