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テコンドーの金に発奮。僧侶のジャズはタイ然自若(東京2020)初日

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タイのジャズが、初日を7バーディボギーなしの「64」で回り、オーストリアのセップ・ストラカに次ぐ、1差の2位と好位置につけた。
各国代表がひしめくリーダーボードに名前を載せて「最高の気持ちです」と、さっそく栄誉に浸った。

この日は雷雨による競技中断があったが、「休憩中はスイッチをオフにして、クラブハウスでリラックスして待ちました」。
再開後も流れを切らさず回り切った。

日本でプレーするのは19年12月の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」以来。
「隔離があるし、ビザを取るのも難しかった。ずっと来られてなかったけど、JGTOでプレーするのは本当に楽しかったので、ずっと戻ってきたかった」。
行動制限をきっちりと守りながらも、2年ぶりの来日を満喫している。

先週末は、選手村でエキサイティングした。
テコンドー49キロ級の決勝戦で、タイ代表のパニパック・ウォンパッタナキットさんが、スペインのアドリアナ・セレソイグレシアスさんを破って金メダルを獲得。

チームメイトのガン・チャルングンと、レクリエーションルームでテレビ観戦していたら、いつのまにか20人超のスペイン選手団に囲まれていた。

「殺されたくなかったので、あまり騒がないようにはしましたが」と、冗談で笑い「今もその瞬間が心に残っています。彼女は改めて、僕が今ここにいる意味を思い出させてくれました」。

開幕のこの日は、とうとう自身もスタートホールに立ち、心が震えた。
タイ代表として紹介を受けて「僕も頑張らなくちゃ」と、奮い立った。

19年にアジアンツアー4勝で、賞金王に輝き昨年のマスターズに初出場。
「あの緊張と感動は、今も覚えているけど今日は同じくらい。いや…それ以上だったかもしれません」。

ジャズにとって、国を背負ってゴルフをする喜びと誇りは、憧れのメジャーさえも上回った。
「自分のためではなく、国のため、タイで待つ大勢の人たちのためにプレーをすること。それがどれほど特別なことか。普段の試合とは比べようもありません。全身全霊でプレーする気持ちが今日のスコアになったのは、間違いありません」と、ジャズは言う。

悲願のメダルにむけて、好位置につけたわけだが一方で、ゴルフは4日間競技。「初日にいいスコアを出しても勝てるわけではないですからね」と、変に気負いすぎない。

21歳の2016年に、母国の習慣に従い出家をしてから、物事が客観的にみられるようになったという。
「少し引いてゴルフについて考えられるようになり、プレッシャーとも少しは上手く付き合えるようになってきました」。
19年1月の日亜共催「SMBCシンガポールオープン」で優勝を飾って日本ツアーに参戦。同年の賞金ランキングは7位だった。
国の威信をかけて戻ってきたジャズは手ごわい。