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ダンロップ・スリクソン福島オープン 2016

22歳の時松隆光(ときまつりゅうこう)が3日目に異次元のゴルフを展開

誰が驚いたって、3日目の63には、本人が一番戸惑った。特に後半は12番からの5連続バーディで、その時点で10アンダーはコース新を軽く越えて同じ最終組の岩本高志も「今日の時松くんは、ビタビタついてゲームみたい」。

この日10個のバーディの中でも、特に9番、16番はピンまで十数センチもなかった。何よりも本人が「訳が分からなくなっていた」と、あっけに取られた。

「今日も気持ちのコントロールはできたと思うが、それにしても予想以上のゴルフなので」と、かえって調子が狂った。グリーン上ではあまり考えず、素振りもせず打つ“ざっくりポン”のリズムもいよいよ17番は、マウンド超えの長いバーディトライを慎重に行きすぎた。

カップまで、3メートルまで寄せたが「後半のパットは時間をかけちゃったかも」と反省の3パット。この日の初ボギーで、新記録こそ夢と消えたが最終日は、5打差の大量リードで迎えることになっても「ボギー、バーディを2回やったら、もう1打差ですから」。

これほどの大差をつけながらも慎重なのは、無理もない。
7月最初のチャレンジトーナメント「ジャパンクリエイトチャレンジin 福岡雷山」では初優勝の経験をしたばかりだが、今回挑むのはツアーでの初Vだ。

ホールアウト後に初めて呼ばれたテレビのインタビューでも殊勝な言葉しか出て来ない。
「良い経験させてもらうだけでも有り難いので。あわよくば上位に行けたら」と、優勝の二文字も出て来ない。
と、カメラの向こうから声がした。
「青木ですよ〜」。
今大会は、ダンロップスポーツと、福島中央テレビとともに、主催をつとめる日本ゴルフツアー機構会長の青木功がこの日から、中継局の解説者としてブースに座っている。

22歳の背筋が伸びた。
「時松です。初めまして」。なんてつい、まるで初対面のようなことを言ったが、もちろん今までに何度も会場で、すれ違うたびに挨拶はしている。
「でも僕のことは青木さんには分からないと思ったので」と律儀に、謙虚に言ったつもりも、ツアー通算51勝のレジェンドには、物足りなかった。

「確かに半分はそういう気持ちでやるのかもしれない。でも半分は、優勝するつもりでやりなさい」と青木に言われて二度、背が伸びた。
「分かりました!」と、答えた。
「明日、またね」と言われて、「宜しくお願いします」とカメラの向こうに向かって頭を下げた。
「青木さんには、勝つ意識を持ってやりなさいと言われた。忘れずにやりたいです」。

5歳でゴルフを始めた頃から、野球のバットを握るのと同じ器用なグリップは、今だかつて「絡めて握ったことがない」と今や最大の個性である。パットのうまさは、あの石川遼も認めるほど。
ツアー通算2勝で、同い年の川村昌弘も時松を今も本名で呼び、「源蔵は昔から上手いし、このまま勝っちゃうんじゃないですか」と、太鼓判を押した。

「あいつ、そんなことを言ってくれたんですね」とこのときこそ一番頬がほころんだ。「あいつは、ずっとシードで、僕はなかなか這い上がれず、でも今年はチャレンジで勝って、少しは追いつけた。あいつがいたから頑張ってこられた」。
最終日は、ライバルからもらったエールを何よりの力にまた一歩、差を縮めてみせる。

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