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ISPSハンダマッチプレー選手権(3回戦〜決勝) 2017

いよいよ頂上決戦へ

先月の1回戦から数えて総勢104人の巨大やぐらがいよいよ完成の時を迎えた。最後の一段を残して、並び立つのは5度の賞金王と、先週の覇者。

ツアー30勝の片山晋呉にとって、マッチプレーとは「1回1回が決勝戦。優勝争いを、やっているような雰囲気。たとえ1アップでもいいから、いかに押さえるか」。それが1回戦でも、準決勝でもそんな区別もなしに、いかに全力で目の前の相手を倒すか。

それだから1戦1戦が気合いのこもった戦いになる。ましてそれが接戦であるほどなおさら「感情が、爆発しちゃいましたね」。この日の最後の1打も、まるで優勝したような騒ぎになった。

趙炳旻(チョビョンミン)との準決勝戦。
1ダウンで迎えた18番で、7メートルを沈めて勝負を引き戻すと「まだ次に行ける」。息をつないだ喜びに、ブンブン拳を振り回して、この日またもや飛び込んだ延長戦。16番からの3ホールを繰り返すサドンデスで、再び舞い戻った18番は、21ホール目にまた吠えに吠えた。

ほぼ同距離につけたバーディチャンスは、古山競技委員長の計測で、わずかボール1個分ほど片山が近いと分かった。
先に打った趙(チョ)が外した。
後から打った2ートルに、日頃の成果が集約された。

「いつも練習の最後の1球は、これを入れたら優勝というつもりで打つ。何十回もこういうことをやってきて、成功体験が多い分、いつもこのために練習しているんだと、自分を信じて打つことが出来た」。

ねじ込んで、何度もガッツポーズを見せつけた。対戦相手に抱きついて、狂喜乱舞で今はシニアで戦う日大の先輩に感謝した。

1ヶ月前から握る長尺パターをここまで使いこなせるようになったのは、レギュラーツアーは3勝、シニアは先月2週連続Vをあげたばかりの米山剛のおかげという。
クラブの一部を体につけて打つアンカリングの禁止が施行されてからは、敬遠していた。
「どうやって打てばいいか分からなかったが、米山さんが、長尺で凄く入っていると聞いて。米山さんちに行って2時間ほど教えてもらった。大きなヒントを頂いて、1ヶ月前から打てるようになった。今回は、ああいうのが普通に、ほとんど上手く打てている。こんなに気持ちよく打てているのは高校生のとき以来」。

この夏からは、メンタルトレーニングにも取り組むなど今なお底抜けの努力と探究心で、前月の1,2回戦から数えて113ホールを勝ち上がってきた。
44歳。「いちばん歳なのに、一番ホール数を重ねている僕。どうなってしまうんでしょか」。
一昨日の宋永漢(ソンヨンハン)との4回戦は27ホールもかかった。
毎日、翌朝まで疲れを残さないでいるだけでも懸命だ。

いよいよ決勝戦でぶつかるH・W・リューは、片山には因縁の相手だ。
先週のツアー2勝目もまたプレーオフを制したが、5年前の初V時にリューに1ホール目で負かされたのが、片山だった。
V決定戦は、あのときの復讐戦でもある。
相手に不足はない。
「明日は、1番から気持ちを入れてやりたい」。
正真正銘のVシーンでこそ、一段とド派手なガッツポーズで決める。

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