記事

シニアチームは最下位にも

今年は“舌”好調だった。シニアのPGAチームは、ボールを飛ばすよりも先に、口で飛ばした。

初出場の水巻善典が、朝一番で“口撃”を開始した。今年はシニアも、女子も、男子も賞金ランキング1位を独占した韓国勢。「強さはどこにあると思うか」との謎解きで、ニヤリと笑って「韓国の人たちは年長者を敬うこと」と水巻は言った。だから今日も分かってるよね、とばかりに男子と女子を牽制した。

やはり初出場の白浜育男も、朝一番のオルタネート方式のダブルス戦で当たった池田勇太に「若大将でしょ。普通にやって勝てるわけない。口での勝負になるんじゃないかな」と、公然と宣言する始末だ。

フィリピン出身のフランキー・ミノザが最後までほとんど喋らなかったのは、あまり日本語が上手くなかっただけのことで、シニアの賞金王の金鐘徳(キムジョンドク)は、そりゃあ韓国語ほど流ちょうではないにしろ、ちょっぴりとんちんかんな日本語と、良い意味のKYぶりで、男子と女子の調子を狂わせた。

「ギャラリーのみなさ〜ん、来年もシニアツアーをよろしくお願いしま〜す」と、いきなり場違いなアピールで腰砕けにさせて、敵の戦意をそぐ作戦。

室田淳は後半のシングルス戦でぶつかった近藤共弘に、「言葉で気を遣うのではなく、スコアで気を遣って」と、懇願した。
しかし舌戦むなしく、今年シニアは史上初の最下位まで落ちた。万年2位のシルバー軍団が、ついに陥落した。

今年は、PGAの松井功会長が今季限りで退任されるということで、「最後に勝って会長を胴上げする」とのシニア勢の望みはかなわなかった。

前半のダブルス戦で大きく出遅れて、その時点で松井会長も「もういいから」と、早々に諦めムードで、芹澤信雄も「楽しくやれればそれでいい」と言ったように、シニア勢は負けてもなおゴルフを謳歌する才能に長けている。

室田は「女子が5年ぶりに優勝してくれて嬉しい」と、目尻を下げた。
芹澤もまた、「男子も女子も、自分の子供よりも若くて。お父さんの気持ちになっちゃう」と、女子にも男子にも勝ちを譲ってなお、嬉しそうにそんなことを言う。

それに、負けたけれども当初の目的はちゃんと達成された。松井会長は18番グリーンでシニア勢のみならず、シニアが愛してやまない女子も、男子も胴上げの輪に加わって、“勇退”に華を添えた。
松井会長は、精鋭18人による贅沢な胴上げで宙を舞った。

最後に室田と横峯さくら選手から大きな花束を受け取って、感極まった松井会長の大きな笑顔を見るにつけても、もうそれだけで、負けても大満足のシニア勢であった。

関連記事