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アコムインターナショナル 1999

「大会がはじまったときは、、当然、予選落ちだと思っていた」川原希

 2日目を終了して、決勝1ラウンド目の組合せ表を見た川原は、愕然とした。「え?オレが最終組!?」
 2日目を66でまわった川原は5人がタイで並ぶ通算7アンダーの3位タイでホールアウトしていた。翌日のペアリングは、5人の中で1番はじめにホールアウトした者が、より最終に近い組に入れられる。川原は、最終組の川岸と、田中の組だった。

「本人はもちろん、私もまさかっって思いました。前の日から痺れてましたよ」と言うのは、今年の日本オープンから、キャディとしてずっと川原を見守ってきた和子夫人(28歳=写真左)だ。

 「だって、今週は予選落ちも覚悟していたくらいだったし、そんな位置で決勝を迎えられるなんて夢にも思っていませんでしたから」。

 9月のサントリーオープンから崩していたショットの調子は、今週に入って特にひどくなっていた。

 練習ラウンドの火曜日には、ダフリ、トップを繰り返し、川原は「もうだめだ、もう帰る」と早々にコースを飛び出してしまった。

 帰りの車の中で、川原は、ひとことも口をきけないほど落ちこんでいた。

「私が何を言ってもだめだと思った。暗い気持ちで食事をとって、ろくに話しもできないまま寝てしまいました。あんなドンゾコの気持ちを味わったのははじめてだったです」(和子さん)。

 予選落ちは当たり前、と思っていた2人に異変が起きたのは大会2日目。

 悩みがウソのようにショットが冴える。パットも次々と決まった。あがってみれば 3位に浮上していた。

 「ゴルフは何が起きるかわかりませんね」と和子夫人。

 3日目のこの日は、2番533ヤードのパー5でピンまで20メートルのイーグルパットを沈め、一挙に首位の田中に並ぶ場面も見せた。11番ホールまでは1イーグル、4 バーディの通算13アンダー。

 「後半はいろいろ考えちゃっていろいろな球が出てしまいました」(川原)と、ショットのブレもあり、12番、15番で2ボギーを叩いて結局、通算11アンダーでフィニッシュ。

 だが、共に戦う2人の表情には充実感が漂っていた。

 和子さんは、「あんなに悪い状況から、ここまでやれた。この事実は今後、2人の宝になるような気がします」と、頬を紅潮させた。「ここまで来たからには勝たせてあげたいけど…それは口が裂けても言えないな。プレッシャーを与えたくないですから」(和子さん)。

 11アンダーは首位と3打差。最終日、川原は最終組のひとつ前でスタートする(10 時、アウトスタート)。決戦前夜、2人はどんな会話を交わすのだろう。

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