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小平智がプレーオフを制してツアー7勝目

今はダメ
地元で勝ち取った3つ目の“日本タイトル”(※)に、米ツアー選手の矜持をこめた。最愛の家族の前で、小平が3年越しのリベンジを完結させた。
本戦最後の2ホールは、圧巻のショットで魅せた。
17番のパー5。5Iを握った220ヤードの2打目。ピン6メートルに乗せた。楽々バーディで、首位をとらえた。
続く18番は因縁のパー3。4Iで、2メートルにつけた。危なげないパーセーブで、そのとき4人が首位に並ぶ大混戦で、いち早く上がった。

優作に、大逆転の賞金王を譲ったのは昨年。
一昨年は、ボギーで1打差のV逸に苦杯をなめた。東京よみうりの18番は6回出て「今まで悔しい思いしかしていない」。
鬼門の最終ホールで6年目にして自身初のバーディを獲ったのは、大会初日。
「今年は5回まわって1アンダーだった。自分的にはめちゃくちゃ成長している」と最終日は石川と、黄と大会史上初の3選手によるプレーオフでも、唯一のパーセーブで即決着させた。

今年、最後の勝者の胸に飛び込んできたのは愛妻。
7つ年下夫はがっちりと受け止めた。決定的瞬間を撮ろうとする報道陣に、一時もみくちゃになった。
「やめて〜〜〜!!」と悲鳴を上げながら、号泣していた美保さん。
「前回、優勝したときには泣かなかったのに、今回は泣いていた。それにびっくりした」と目を丸くした夫。
妻は妻で夫がヒーロー会見で漏らした本音に驚いていた。今年4月の「RBCヘリテージ」で日本勢として、史上5人目の米ツアーを制覇して転戦を始めたが、小平は「少し苦しかった」と、打ち明けた。
「私には、弱いところを見せない人。アメリカで、楽しくゴルフをしていると思っていた」と美保さんは、夫の告白を意外な思いで聞いていた。

「米選手の高い球、飛距離も魅力。すごい選手をいろいろ見て、自分が劣っているように感じた」と、小平はいう。
日本では、V争いをしてもおかしくないゴルフをやっても30、40位がせいぜい。
「ゴルフは結果がすべて。結果が出ないと落ち込んだ」。
予選落ちがたび重なれば、「米選手のように、どうやって打てばいいのか」。自分のゴルフを見失った。
ふさぎ込みな選手に、ベテランキャディが風穴を開けた。10月、ある日の食事の席で「もっと適当にやれよ」と、大溝雅教さん。
「軽い言葉ですけど、僕には重かった。その時の自分には、適当にやるのが難しかった」。
本場で揉まれるうちに、考えすぎていた、と気が付いた。
「試行錯誤をして、スイングを毎回変えたり。でも、以前の自分は違った」。
のびのびと、切れ味鋭く、怖いもの知らずで振りちぎる。思い切りの良さが、持ち味だ。
「アメリカで、優勝したときもそういうゴルフ。自分のゴルフを変えるな、と。適当にゴルフをしろ、と。前はそうだったろう、と大溝さんに言われて。吹っ切れた。シンプルに考えるようになった。調子が戻ってきた」。
アメリカで失いかけた自信を取り戻すには十分の帰国V7となった。

4打差の11位タイから出た最終日は、日大で3つ下の堀川の初Vがかかっていたが「つぶしてやろうという気持ちでやった」と、言葉も選ばず小平は言う。
「初優勝はさせたくない、と思った。ベテランや、海外に行ってる選手が、日本にいる若手を阻む。そういう縮図は、大事だと思った」。
自分も先輩たちに、そうやって何度も跳ね返されて強くなれた。
先週は、谷原秀人と組んで豪メルボルンで行われたISPAハンダワールド杯に出たその足で、会場入り。
「戻ってきた試合くらいは、若い選手の壁になろうと思った」。
13人の初V者を出した今季。しかし久々に帰って、29歳は焦れていた。
「今の若い選手は物欲も、勝ちたいという気持ちも少ない気がする。欲をもっと、全面に出してやれば、盛り上がるし強い選手も増えてくるのに」。
賞金王に輝いた周吾。
「上手いと思うし、僕もずっと注目していた選手。あいつの初めての最終日最終組で回ったのが僕。あの時と比べると、まためちゃくちゃ上手くなっている。賞金王になるのは当たり前」。
だが一方で、今季わずか1勝の戴冠だ。
「ゴルフは最高に上手いのに、優勝が少ないのはチャンスをつかむ力。周吾はそこをもっと研究すればよいのにと思う。世界で活躍できる選手だと思うので、期待を込めて」と、V会見でいまの日本ツアーに一石を投じた。

心技体ともに、逞しく戻った夫に「やっぱり彼は、ゴルフをやってる姿が一番かっこいい」と、うれし涙の妻は惚れ惚れ。
「ガンガン行くのが彼の良さ。今日はそれが見れた。素晴らしい勝ち方をした」と、夫のあまりの強気に元女王もひれ伏した。
日テレの河村亮アナウンサーに促されて、グリーンに上がったものの「私も喋って大丈夫?」と関白な、年下夫の顔色を、そっと伺いながらも堂々宣言。
「もっともっと、勝ってもらってもっともっと、稼いでもらって2人で幸せな人生を歩んでいきたいと思います!!」。
満員の18番グリーンがどっと沸いた。コース近くの実家から、ご両親も久々の観戦。かけつけた大家族も大喜びだった。
たまの帰国も、相変わらずこのおしどり夫婦はとりまく人たちを、幸せな気持ちにさせる。

※2013年の「ツアー選手権」、15年の「日本オープン」に続いて29歳82日での「日本シリーズ」制覇で日本タイトル3冠は、ジャンボ尾崎(27歳297日)、丸山茂樹(28歳86日)、中嶋常幸(28歳207日)に次ぐ、史上4番目の年少記録。

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