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やっと勝って泣いた。木下稜介が8年目の悲願を達成

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NHKの放送マイクが勝者のすすり泣きを捉えた。しばらく、静かな息遣いだけが聞こえた。絞り出した声もかすれていた。

「ここまで来るのは、本当に長く、苦しくて。これまで、何度も負けたんですけど、ようやく優勝することができた」。
やっと、勝って泣けた。
木下稜介が、プロ8年目の悲願を5年シードの日本タイトルで飾った。

最終日を前に、4差の単独トップに立った。
「でも、宍戸は最後まで分からない。昨日は夜も寝れなくて。プレッシャーでくじけそうだった」。

緊張で、朝イチの第1打が右の林に飛んだ。
「でも奇跡的に前が空いていた」と、グリーンの前まで運び、ラフから3オン1パット。そつないパーセーブで拍手を浴びた。

「思い込みかもしれない。でも、今日はほとんどの方が、僕を応援してくれたと感じた。応援を励みに立ち直ることができた」。
今シーズン初の有観客が、5差の圧勝劇を呼び込んだ。

29歳の座右の銘は「日々努力」という。
2013年のプロ入りからこの日を夢見て、研鑽を積んできた。
「気分転換に、オフはクラブを握らないという人もいる。でも、僕は握らないと落ち着かない。ゴルフ大好き野郎です」。

誰よりも体を鍛え、誰よりも練習した。
昨年から奥嶋誠昭コーチに師事してさらに磨きをかけてきた。

弱点克服にも力を入れた。
「パットで悪くなってくると、僕は右手が悪さを始める。右手1本の練習を繰り返してスピードが合ってきた」。

技術が向上すると、V争いの数は格段に増えたが、勝てない。
「これ以上どうしたら?」。
ロッカールームで泣いたのは、昨11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」だ。
最終日を首位で出ながら、最終ホールで香妻に逆転負けした。
「20代最後に1勝を」と、覚悟で臨んだ今年も2度、3度と惜しいのが続いてそのたびに涙をためた。
「正直、もうダメなのかな」と、諦めもよぎった。
「今日、勝てないと、本当にもう勝てない」。
この日は、2位と差がつくほど背水の陣で臨んだ。
「気持ちで負けたらだめ。ヒデキみたいに気持ちだけでもしっかり持って」。
6差で入った18番で、やっと気持ちがほどけた。
2打目が、グリーンを捉えた瞬間「ウルッと来た」。
バーディトライがカップに寄ると、涙はもうとめどなく流れた。
「初優勝が遠くて。呪縛じゃないけど苦しくて。やっと荷物をひとつ下ろせる」。

同学年の2人にも、やっと一歩近づいた。
「リョウは、高校生で勝って、ヒデキは(大学生で)マスターズに行って。一番刺激をもらえる2人。常に比較されて育ってきたけど、同級生でよかったと思う」。石川と、松山の存在にも改めて感謝した。

悲願の1勝を5年シードで飾って、一気に夢も膨らんだ。
「海外にも挑戦したいし、マスターズにも出たい。もっと優勝を重ねて賞金王も狙いたい」。
次から次へと尽きないが、まずは7月。「全英オープン」で、初メジャーを踏む。
「日本代表として、トップ10を目指して、来年の150回記念はセントアンドリュースであるので。そこを目指して頑張ろうと思います」。
自信という餞別を持って挑める。

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