マイナビABCチャンピオンシップ  2016

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片山晋呉が区切りのツアー通算30勝

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史上7人しかいない、永久シード選手の最年少がまたひとつ、勝ち星を重ねた。
アナウンサーに促され、マイクジャックで可愛く、
「私、片山晋呉、43歳、B型。30勝、したぞぉ~!!」。
年甲斐もなく、と言われても構わない。
「その中でも30勝を味わった人は、6人(※)しかいないんだから!」。
ここに辿り着くまでもがき苦しんでも、歓喜は一瞬。
「キツいもん。最後のパットだってシビれるもん。あのキツいのを、乗り越えてきたんだもん」。
だからこそ、全身から溢れ出す喜びを味わい尽くしたいのだ。
大好きなここABCで、大会史上最多の4勝目もまた、18番でハシャぎにハシャいで「男があれだけ喜ぶのを見たことないでしょ? この歳になってもまだあんなことがまだ出来る・・・。やってて良かった」。
噛みしめる嬉しさも、みなさんと分け合いたいのだ。一緒に大会を、盛り上げたいのだ。
主催者のみなさんにも喜んでいただきたいのだ。

開幕前には転職サイトの「マイナビ」で募集をかけて、翌31日にも開店する和食の新店舗の人材を確保した。
2打差の2位から出た最終日はスタート前にも、検索し尽くして出て行った。
大会特別協賛の「マイナビ」の企業理念は「私を導く。マイ波、私の波に乗る。今日は僕も支えてくれる人たちに導かれ、マイ波に乗る」。頭にたたき込んだ。
同社の本社住所にも着目した。「東京都千代田区一ツ橋1-“11”-1・・・」。
「片山さん、我が社を宣伝してくださってありがとう。でも正しくは1-“1”-1です」と中川信行・代表取締役社長には、お詫びして、訂正しながら「御社のとことん1にこだわる姿勢。僕も、今日は1番を目指して、人より1打でも少なく勝つ」。

2番のチップインバーディで詰め寄り5番で7メートルを沈めてリーダーにとって変わると、一度も首位を譲らなかった。
小林は5番のダブルボギーで「崩れるかなと思ったけれど。後半からまた凄く良いプレーをし出してついて来た。彼に勝つにはどうするか」。

5度の賞金王の見せ所。僅差の攻防戦を見て取るや「今日は彼に1打、勝つパターンでいい」。
圧勝はいらない。
「本当に、ちっちゃな差でいい。でもそれが、凄く大きい」。
それを見せつけたのが、2打差で迎えた18番ホールだ。
先に小林が、奥6メートルのイーグルチャンスにつけた。
「どっちに勝たせようかという中で、神様はまだ僕でいいよと言ってくれない」。
最後の試練。セミラフから180ヤードの2打目。「10回打って、7回うまく乗せられる。でも、3回ボギーを打つリスクもある」。
危険回避を選んだ。迷わずフェアウィに刻んだ。97ヤードの3打目は、スピンと傾斜で小林よりわずかに内側のバーディチャンスにつけた。
「最後のふた転がりで、僕が内側につけた。ちょっとでも、内側につけたことが、大きかった」。
池に向かって急な下りはほぼ同じラインから、小林に先にイーグルチャンスを打たせることが出来た。
「僕が外側だったら僕は、狙いに行けなかった。僕が外側だったら彼はたぶん入れていた」。
片山が先にバーディパットを打って、ラインを見せたら小林に、楽にイーグルパットを打たせることになっていた。
「彼は外しても、2位は変わらないし狙っていける。そういうパットは入ると思う」。
しかし、片山よりほんの少し遠かった小林が、先に打つことになってそして外した。
プレーオフの可能性は消えた。片山は、確実に2打で終わればよくなった。ほんの数センチ差が勝敗を分けた。
「ちっちゃいけどそれが大事な勝負のあやだった」。
公言どおりにわずか1打差でも“圧勝”だった。
最終組で回った小林も、香妻陣一朗もおとなしく、初Vを狙う中でも一人気を吐くベテランは、チップインのボールにキスしてみせたり、17番でバンカーから入れ損ねて派手に悔しがったり。「オーバーアクションと言われても、やっぱり勝負だから」。
終始、感情を剥き出して、「見せつけながらやれたかな」。それもひとつの駆け引きだった。
コースを、ゴルフゲームを知り尽くしたベテランの貫禄勝ちだった。

初の賞金王に輝いた2000年には5勝を挙げた。09年にはマスターズで4位に入った。
「でもさすがに今から海外でやれるとは思っていない」。
今さら対等に張り合う気など毛頭ない。
今年、日本代表をつとめたリオ五輪。優勝を飾ったローズと練習ラウンドで回って「ビビって3ホールでやめたくらい」。
この日はちょうど松山英樹がWGCを、7打差のまさに圧勝で制して「僕には考えられないくらい凄い」とただただひれ伏し驚嘆するしかない。

40歳を超えた2013年から、これで4年連続勝利も常勝期のようにはいかなくなった。
序盤から、不振を極めた今季は「どうしようかというくらいにパランパラン」。
プロアマ問わず、誰かれ構わず復調のヒントを訪ね歩いた。
スイングに試行錯誤を重ね、パットはこの日だけでも3種類の握り方を、距離やラインで使い分けた。
大会3日目にも陽が暮れるまで練習し、最後にコースを出たのも片山だった。
いまなお血のにじむ努力も「この歳で、キツいはキツい」。死にものぐるいでもぎとった。
「この歳で、30という数字は重い」。だからこそ、「全身が震えるぐらいの喜びが来る。この一瞬のためだけに頑張っている」。
年々1勝の重みが増していく中でも中嶋常幸が、以前「50歳の優勝は相当凄いよ」と、言っていたのを思い出す。
「7年後に自分が勝つことを考えたら本当に、大変なことになっちゃう」と、その瞬間を想像して43歳がまた体を震わせた。

※永久シード選手とツアー通算勝ち星
尾崎将司(94勝)
青木功(51勝)
中嶋常幸(48勝)
尾崎直道(32勝)
倉本昌弘(30勝)
片山晋呉(30勝)
杉原輝雄(28勝)

なお、30勝到達年齢でいうなら片山は、尾崎直道の47歳5ヶ月8日を抜いて、43歳8ヶ月30日は史上4番目の年少記録でした。

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