長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2012

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李京勲(イキョンフン)がツアー初V

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  • 淡々とプレーしていた20歳が、感情を爆発させた瞬間。ウイニングパットを決めた時こそガッツポーズを握ったが、それもこの一瞬だけだった。これも鍛錬のたまものだ。
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  • 普段は、ブレンダン・ジョーンズのバッグを担ぐプロキャディのスコット・ビントさん。たまたまこの週はジョーンズがお休みで、臨時の初タッグを組むなりの快挙だった。
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  • “ミスター”から受けた優勝杯。「若々しいアグレッシブなゴルフは、初優勝で完全優勝という快挙を成し遂げるにふわさしい、素晴らしい内容でした」と長嶋氏も絶賛された
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  • 初めての“父離れ”で臨んだ大会でツアー初V。サンムーさんの狙いはばっちりとはまった。「こうして優勝出来たのも、支えてくれた父のおかげ。この優勝を捧げたい」。
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  • これがプロ初Vに生まれて初めての優勝スピーチは、スポンサーやボランティアのみなさんへのお礼だけ言ってそそくさと退散しようとして金にとがめられ、再登壇する場面も

韓国からまた一人、新たなヒーロー誕生だ。弱冠二十歳のルーキーが、完全優勝を達成した。最終日は両者一歩も譲らない。大先輩との一騎打ちにも顔色ひとつ、変えなかった。これがプロ初Vとは思えない。12歳も年上の金亨成(キムヒョンソン)を向こうに回して、堂々たる大接戦は「17番が、決定打となりました」。

互いに右ラフからの第2打を、李はピンそばにつけた。1メートルもないバーディを、難なく決めた。それでもなお、圧倒的な飛距離を武器に、まだ攻めた。1打リードで迎えた18番パー5。「216メートル」は池の真上を越えていくルートで、躊躇なくピンを狙った。悠々と、奥のカラーに運んだ。怖い物知らずのバーディ締めに、さすがの先輩もポカンとした。

「19アンダーなんて、びっくりです」とは金。「僕は、16アンダーで勝てると思っていたので」。同じ最終組で回った宮本勝昌も呆れた。「いやあ、19アンダーは行かないでしょう」。大会最多アンダー記録の更新にも、大物ぶりが漂った。

一見、淡々として見えるが父親の相武(サンムー)さんは、首を振る。「実は、あの子の胸の奥は情熱に満ちている」。確かに優勝の瞬間に、一瞬だけそれを垣間見せた。一度だけ、力強く振り下ろしたガッツポーズが物語っていた。「プロになって初優勝なので、今日は寝られないと思います」。

しかし普段はそんな浮かれた感情も、ひけらかすことは絶対にない。ゴルフを始めた13歳のころから父親に言い聞かされてきた。「強くなるにはまず、自分の心をコントロール出来なければならない」。どんなピンチにも、ジタバタしてはいけない。「あの子にはいつも平坦な心でいるように。メンタルの本を読ませて勉強させた」。
小さい頃から物覚えも早かった。たとえば歌。「1回も聞けば、あの子は歌詞も音程も、リズムも完璧に歌えた」。
Jポップもすぐに覚えた。中でも十八番は懐かしいヒット曲。中西保志さんの「最後の雨」。プロさながらに歌い上げる。得意のカラオケ同様に類い希なる吸収力で、ゴルフもメキメキと腕をあげた。

「凄く飛ばすし、パットも上手い。アマチュア時代から、有名な選手だった」と、先輩の金は言う。2010年のアジア大会で金メダルを獲った。実績が評価され、兵役も免れた。満を持して来日した。昨年のファイナルQTランク1位の実力は、通説どおり本当だった(※)。

尊敬してやまない母国の先輩、金庚泰(キムキョンテ)や裵相文(ベサンムン)さえなし得なかった。昨年と、一昨年の賞金王でも日本での初Vには本格参戦から1年以上を要した。
李は開幕から3戦目で、早々に初シード入りを決めていた。さらに7戦目にして獲得賞金が2000万円を超えたとき、父親はあっさりと“キャディ稼業”に見切りをつけた。「息子もそろそろプロキャディをつけて、レベルアップを図るとき」。今週は、スコット・ビントさんとの初タッグにも、父の目算がみごとにハマった。

優勝賞金は3000万円で、憧れのベテランにも約360万円差に迫って賞金ランクは2位浮上。藤田寛之とは4月のつるやオープンで、自身初の最終日最終組を経験した。当時は4打差の2位に敗れたが、「藤田さんのプレースタイルはほんとに凄くカッコよくて。得に小技。非常に勉強になりました」と惚れ込んで以来、お手本にしてきた選手が今季初の予選落ちを喫した大会で、主役の座にとってかわった。

日本が誇る同い年のスターも、4打差で退けた。石川遼の活躍は、15歳のときから知っている。「史上最年少での優勝は、韓国でも大きなニュースになりましたので」。以来、常に気になる存在は実績もさることながら、見習いたいのはそのファッション。
「華やかでかっこいい。僕も石川選手のように、お洒落にウェアを着こなせたら」。最終日は石川の勝負服にあやかった。真っ赤なパンツは“遼さながら”に、この日ばかりはゴルフでも、圧倒的な強さでそのお株を奪った。石川が「この大会でいつか必ず優勝報告したい」と焦がれてやまない“ミスター”こと長嶋茂雄氏にも「超・新星の登場を、目の当たりにできてとても嬉しい」と、言わしめた。

ヒーローインタビューで誤って、「金成亨(キムヒョンソン)選手」と紹介されてしまったが、今年が終わる頃にはきっと、難解な漢字も誰も読み違えたりしないだろう。

李京勲(イキョンフン)、恐るべし20歳。
早くも、次の賞金王の呼び声高い。「将来の夢は米ツアーでの優勝ですが、それまでにまだまだ学ぶべきことはたくさんある。日本でいっぱい勉強したい」。
ちなみにただいま日本語も、猛勉強中。先月は、2週間のオープンウィークに日本語学校にも通った。初めて覚えた長文は、「失礼ですが、彼女はいますか?」。
いったい語学学校の先生は、どんなテキストを使ったのか。一斉に吹き出した報道陣に、訳も分からぬままに、それでも何か良らぬ発言をしてしまったと察して、真っ赤な顔で「スイマセンッ!!」。
この週は、“本場”の北海道で「アボジ」におねだりして大好きな回転寿司に4日も通った。普段の素顔はほのぼのと、癒やし系の20歳でもある。

※過去に、ファイナルQTランクで1位に輝いた翌年に、ツアー優勝を上げた選手には2000年の水巻善典、2003年の谷原秀人。そして2004年には、李も尊敬する選手の一人にあげる母国韓国のヒーロー、Y・E・ヤンがおり、毎年その実力が注目されています。

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